2015年10月21日にアイレックス綾川で(株)ヤマノ主催の
皮膚・口腔トラブルの基礎知識を学ぶセミナーが開催されました。
お店でトリミングしていると、お客様からの悩み相談で一番多いのが皮膚と口のトラブルの相談が多いですね。
皮膚は昔から悩み相談では多いのですが、お口のトラブルはここ数年、確実に増えてきています。
今回のセミナーはその2つのトラブルに対する基礎知識を再確認しましょうと言うことで、獣医師の保永さんを招いてセミナーが行われました。
まずは獣医師の保永さんの得意分野の皮膚トラブルからセミナーが始まりました。
皮膚病の紹介とそれに対して獣医さんが検査する検査方法と処方する薬とシャンプーの種類の説明
膿皮症の症状と検査方法
感染経路:細菌感染によるもので黄色ブドウ球菌とか大腸菌由来でおこることも
検査方法:皮膚スタンプ
治療:抗生剤投与(セファレキシン)で効かない場合はその他の抗生剤
抗菌剤軟膏は広範囲の時に使用
薬用シャンプー療法は抗菌性物質のクロルヘキシジン、過酸化ベンゾイル、ポピドンヨードのどれかが入っているシャンプー
ノルバサンシャンプー0.5、酢酸クロルヘキシジンシャンプー、マラセブ、ユニバーサルメディケートシャンプー、ビルバゾイル、ヨードシャンプー
目的は皮膚炎の原因菌を取り除く事
マラセチア性皮膚炎の症状と治療方法
見た目はマラセチアと膿皮症と区別がつきにくい
感染経路:マラセチア(酵母菌)の感染によるもの
検査方法:皮膚スタンプ
治療:抗真菌剤の投与、(イトラコナゾール、ケトコナゾール)
薬用シャンプー療法はクロルヘキシジン、ミコナゾールの入ってるシャンプーを使用
マラセブ、セボゾールシャンプー、コラージュフルフルネクスト(人間用の薬局で手に入ります)
脂漏症と併発している場合は薬用の2度洗いを1、脱脂作用のシャンプー 2、抗真菌性シャンプー
皮膚糸状菌症の症状と検査方法
感染経路:糸状菌(真菌)感染によるものでおこります
検査方法:ウッド検査、直接鏡険、培養
治療:抗真菌剤(イトラコナゾール、ケトコナゾール)の投与なのですが肝臓に負担が有るので血液検査後の処方になるそうです。
薬用シャンプー療法はクロルヘキジン、ミコナゾールのどれかが入ってるシャンプー
目的はフケを取り除き、原因菌を取り除く事
角質溶解性シャンプー(フケをとかす):硫黄、サリチル酸
ケトラックス、サルファサリチル酸シャンプー
抗真菌性シャンプー:ミコナゾール、クロルヘキシジン
マラセブ、セボゾールシャンプー、コラージュフルフルネクスト(人間用の薬局で手に入ります)
*注意:同居犬、同居人にも感染の可能性ありで、犬の場合は痒みは少ないですが人に感染すれば痒みが出てきます。
フケ症の症状と治療方法
症状:角化亢進、ドライスキンが原因でフケが出る(細かくてもフケが出たらフケ症)
先天性角化症(ダックス、ドーベルマン、アイリッシュセッター、G・シェパードなどに起こりやすいです)
栄養学的疾患(ビタミンA&亜鉛の欠乏)
皮膚感染症(膿皮症、毛包虫症、皮膚糸状菌症)
指線炎(秋田犬が出やすいです)
薬用シャンプー療法の目的は表皮や毛穴に溜まるフケを定期的に取り除く事です。
角質溶解作用、角質調整作用:硫黄、サリチル酸を併用することで角質除去作用が強くなる
サルファサリチル酸シャンプー、ケトラックス
脂漏症の症状と治療方法
症状:皮脂が多く、皮膚や毛がべたつき、脂漏臭がしたり脂漏性皮膚炎を起こす。
犬アトピー性皮膚炎、食物アレルギーや甲状腺機能低下症(高齢犬に起こりやすい)などの内分泌疾患で2次的になることも。
脂漏性になりやすい犬種はシーズー、ウエスティ、A・コッカ、E・スプリンガーバセット・ハウンド、ダックス、シャーペイ、L・リトリバー・E・ブルドッグ、G・シェパードなど
薬用シャンプー療法の目的は過剰な皮脂や角質を定期的に除去する事
脱脂作用を持つもの
二酸化セレン:強力な脱脂作用でワックス状になったフケの除去に有効
薬用カニマールワン、ビルバゾイル
過酸化ベンゾイル:強力な脱脂作用、角質除去作用、毛包洗浄作用、抗菌効果がある
マラセブ
両方のシャンプーを使用しながら脂漏症の皮膚には刺激が強いためシャンプーは週2回まで
疥癬
症状:イヌセンコウヒゼンダニのメスが疥癬トンネルを掘りながら産卵するので犬は非常に痒いです。
*注意:同居犬、同居人にもうつります
治療:駆除剤の投与:セラメクチン、イベルメクチン(フィラリア薬としても使われる)
シャンプー:アミトラズ薬浴(薬品がきつ過ぎて副作用が出る場合も)
毛包中症(アカラス)(ニキビダニ)
症状は局所性毛包虫症と全身性毛包虫症が有ります。
局所性毛包虫症は特に顔に好発し主に3~6か月齢の子犬にみられ自然寛解する場合も有る
全身性毛包虫症は頭部、四肢、体幹に好発し3~18か月齢か成犬に発症する
検査方法:スタンプ、スクレーピング
治療:イベルメクチン、ドラメクチン
(コリー、シェルティー、A・シェパードは治療に注意)
ノミアレルギー性皮膚炎
症状:背部~腰背部中心に強い痒み(ノミの寄生が発見できなくてもノミアレルギー性皮膚炎を疑う)
*注意:ノミが1匹でもつけばノミアレルギーになります。
治療:ノミ駆除薬のシ塗布(定期的に)
フロントライン(6~7時間ぐらいで効果を発揮して約1ヶ月位効き目が有る)
ネクスガード(2時間ぐらいで効果を発揮して約1ヶ月位効き目が有る)
プラべクト錠(3か月位効果が有る)
犬アトピー性皮膚炎
ハウスダストや花粉、植物などアレルゲンとの接触で生後6か月~3歳頃に発症します。
特に頭部(眼、口、耳)、体幹部内側(ソ径、腋下)、四肢内側、趾間
発赤、苔癬化、色素沈着、丘疹
アトピー性皮膚炎の臨床症状の定義が有るみたいで
皮膚炎の特徴:すべてを満たさなければいけない
1.瘙痒を伴う皮膚炎
2.丘疹、膨疹、紅斑、苔癬化の少なくとも1つ以上の皮膚病変
3.慢性あるいは再発性の皮膚炎
4.3歳以下で発症
病変部位の特徴:いづれか1つを満たさなければいけない
1.眼および/あるいは口周辺、外耳炎の発症
2.四肢端(趾間)、手根部伸展部位、足根部屈曲部、大腿部外側の発症
3.胸部および/あるいは腋窩部、肘屈曲部の発症
4.会陰部および鼠径部を含む腹部の発症
5.背中の発症
アトピー性皮膚炎と食物アレルギーはほぼ同じ場所に出て来ますので正確に調べる場合はIgE検査をします。
アトピー性皮膚炎の場合は
節足動物(ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ、ノミ、蚊、ゴキブリ)
雑草(ヨモギ、オオブタクサ、アキノキリンソウ、タンポポ、フランスギク)
牧草(カモガヤ、ハルガヤ、オオアワガエリ、ホソムギ、ギョウギシバ)
樹木(スギ、シラカンバ、ハンノギ)
カビ(アスペルギルス、アルテリナリア、グラドスポリウム、ペニシリウム)
上記に反応します
食物アレルギーの場合は
主要食物アレルゲン(牛肉、豚肉、鶏肉、卵白、卵黄、牛乳、小麦、大豆、トウモロコシ)
除去食アレルゲン(羊肉、七面鳥、アヒル、サケ、タラ、ナマズ、シシャモ、ジャガイモ、米)
上記に反応します。
アトピー性皮膚炎の治療
内科治療:ステロイド剤(長期は副作用で肝障害を起こす)、免疫制御剤投与(2週間飲み続けなければ効果が出ません)
インターフェロン注射:通院の手間が掛かりますが60%ぐらいの子に効果がでます
減感作療法(コヒョウダニの場合):7~8割の子が効果があります。
薬用シャンプー療法の目的はフケや皮表脂質のバランスを整え感染症の治療や予防をする
オーツシャンプー、エピスース、アデルミル、ディクソシャンプー
薬用シャンプー手順
1.ブラッシング
2.予洗い(30℃以下の水で肌を5分間、良く濡らす)
3.汚れのひどい子は通常シャンプー
4.薬用シャンプー(全身にシャンプーを付着し擦らずにマッサージするように洗い可能であれば10分静置)
5.すすぎ(30℃以下の水で肌を5分間よくすすぐ)
6.乾燥(タオルドライを中心にして乾燥しすぎに注意)
*30℃以下の水で洗う分けは通常のシャンプー温度38~39℃では血流がよくなり痒みが増しますので30℃以下のぬるま湯というか水で洗います。(冷水はダメですよ。)
口内トラブル
愛犬・愛猫の口臭は気になりますか?
表1
この表では6歳から少し気になるととても気になる合わせたら45%までになってます。
歯石や歯垢がついている割合
表2
10歳にもなれば7割の子が歯石や歯垢がついています。
表1と照らし合わせてもらえれば口臭が気になる割合と歯石・歯垢がついてる割合がほぼ一緒です。
口臭の元が歯石・歯垢だと分かってもらえるはずです。
歯石・歯垢というのは人間と一緒で細菌の塊であります。
例えで言えばキッチンのシンクのヌメリが固まったものが歯石です。
デンタルケアの方法
デンタルケアの方法で一番多いのがデンタルガム&デンタルケア用おもちゃですよね。
でもこの方法はデンタルケアの方法では一番効果が少ないです。
やはり一番デンタルケアで良いのが歯ブラシを使ったデンタルケアです。
デンタルケアに対する犬猫の様子
やっぱり、とても嫌がると少し嫌がるを合わせると45%もの子が嫌がってます。
それでもデンタルケアを続けている人の割合は66%の人が続けています
デンタルケアを続けれなかった人のは何がダメだったかは
愛犬が、嫌がる、噛むなど愛犬の問題と飼主の忘れててとか面倒にとかやり方が分からない、効果が見られないなどでした
(口内トラブルについて書いている項目の画像はアニコム家庭どうぶつ白書2014の8-9Pから流用)
人間の場合は虫歯になりやすい人と歯周病になりやすい人に分けられるみたいですが
犬の場合はほぼ歯周病になります。
歯周病にならないためには毎日のデンタルケア(歯磨き)が必要になります
歯周病になれば
口鼻瘻管:くしゃみ、鼻汁、鼻出血
眼窩膿瘍
心内膜炎、糸球体賢炎、肝膿瘍などの一因に
歯周病にならないためには子犬の時から毎日歯磨きを癖付ましょう。
(人間は毎日歯磨きするのになんでワンちゃんは磨かないのですか?毎日歯磨きしましょうね)
歯磨きに慣れるには
ステップ1:口を手で触る(嫌がらなくなったら)前歯、犬歯、奥歯の順で触っていく慣れるまで毎日根気よく
ステップ2:手にガーゼを巻いて歯に触っていく前歯、犬歯、奥歯の順で慣れるまで毎日根気よく
ステップ3:歯ブラシで前歯、犬歯、奥歯の順で磨いていく(歯ブラシの使い方は人間と一緒です)
*ショップでの歯石取り
今、ショップでは犬の歯石取りがオプションメニューでしてくれるところが増えて来てますが、あまりお勧めは出来ません。
飼主様からしたらオプションでお金を払ったのだから綺麗に歯石を取ってくれるものと思われてますが、口回りを触られてない子、歯石が付きすぎて嫌がる子は出来なくて
ショップが出来るのは少し位口回りを嫌がる子ぐらいで、しかも強引に表面上の歯石を取ることになり、その後口回りを触らしてくれなくなる可能性が出てきます。
しかもショップでは歯茎の中の歯石と歯の内側の歯石は取れません。
今ある歯石を取りたいのであれば獣医さんの所で歯石取りをしてもらうのが一番確実ですね、その後毎日歯磨きをしてた方がワンちゃんへのストレスは一番少ないはずです。
今回のセミナーには佐世保から車で来られてた業者さまがいらっしゃいました。
しかも車が派手!
このメーカーは人間用の医療器具を作ってるメーカーで今回は獣医師と共同開発した
アニマルウォーター2の営業に回って来てました。
アニマルウォーター2とは水に電気を流して伝医水となる物を作る機械です。
その伝医水は口腔洗浄に効果が有って口臭と歯石予防になるらしいです。
でも、大本が水なのでこれで歯石が取れる訳では有りません、あくまで歯磨きと兼用してもらえれば効果が上がるみたいです。
今回のセミナーで2015年のセミナーは終了です。
来年は一番最初にドッグトレーナーの方のセミナーが有るみたいです。